日大のアメフト問題について書くのだが…なんか日大「だけが悪い」って話に落ち着きそうなところに納得がいかない。
・日大の会長がヤクザと繋がってる
・人事権を握っているアメフト部の前監督が日大の政治権力を掌握していて、なおかつ会長と同じ派閥のNo.2だから、何があっても守られる
・学生が堂々とした記者会見を開く一方、大人は徹底的に保身に走って政治権力の維持に奔走する腐った体質が
みたいな話は確かに悪い。
今回はアメフトというスポーツが絡むテーマだからスポーツ庁が動いたり、アスリートとして一緒に試合する大学が動いているから比較的追い詰められてる。
でも、大学の対応がなんであんなにひどいかを考えた時に「日大の政治権力にはヤクザと東京五輪が絡んでてうんぬん」というのは、どうも半分ぐらいしか的を射てないように思う。
大学生のサークルの不祥事はヤリサー関連の事件が多いけど、ヤリサーの不祥事への対応って基本退学者が出ないよね~
そもそも、普通はスポーツで事件は起きないよね~。起きたから、選手よりも監督に批判が行ってるけど、学生が誰かを犯罪的にケガさせたり、酷いいじめやハラスメントが大学で起こるのは…どちらかと言うと体育会系のサークルの練習中か、ヤリサーだよね…。特にヤリサー。
で、ヤリサー絡みの事件って基本的に、犯罪まがいの割には退学者や逮捕者はあまり出ない。
ほとんどは研修という名のお咎めっぽい手続きをしてサークルを解散しておしまい。
例外はスーパーフリー事件で、刑事事件になってやっと退学者が出るぐらいに酷い。
しかも、周囲の大人が早稲田側をかばって、蓋を開けてみたらスーパーフリー事件の首謀者は関東連合とつながりがある、半グレヤクザみたいな状態になっていたというぐらいに悪化してからの逮捕となった。(あるいは慶應義塾の広告研究会みたいに、未成年を泥酔させてレイプしてそれが警察沙汰になって…ぐらいのところまで行かないと、退学者って出ないんだよなぁ…。しかも、この事件だって、犯罪に関わった学生6人は横浜の裁判所から不起訴とされているというから驚く)
逆に言うと、世間を騒がすほどひどい事件を起こしても、
・刑事事件になるか
・ヤクザとのつながりがある
…というぐらいに酷くないと大学は基本的に丸く収めようとするんだよね…。犯罪の匂いがするような酷い案件でさえね。
直近で有名なのは、明治大学のヤリサーが新歓飲み会で起こした泥酔事件の時がそうなんだけど…大騒ぎになったけど、大学側の対応は白々しいほどあっさりした対応だったわけ。
そりゃ、その時にはこんな画像が、ネットでもテレビでも報じられたよ?
でも、2週間したら、このトラブルはピタッと報じられることもなくなった。
それをいいことに明治大学は…該当するサークルの廃止と、お酒の飲み方の研修をする…というひどい対応だったわけ。
でも、2週間すると新しいネタが出てくるわけでも大きな抗議活動が続くわけでもなくピタッと止まったわけ。被害にあった学生がたくさんいたはずの日本女子大学側も明治大学に責任を追求することなくピタッと止まっちゃったから。
起こった時には「スーパーフリー事件の再来」だとか、「薬物事件」だとか色々言われてたのにね。
日大の事件もあと1週間ぐらい内田前監督が入院したっきり黙っていて、他の職員も失言しなかったら、ピタッと揉め事が収まるだろう。…少なくとも日大はそう思ってるから、ああいう雑な対応をしているのだろう。
実際、ネットで騒ぎになってる事件や、犯罪まがいの事件の多くがそうだった。
せいぜい2週間ぐらいしか盛り上がらないし、大学のブランドイメージもあんまり変わらないことを大学側もわかってるからこそ、記者や社会からの苦情や取材に対して雑な対応をしているんだから。
そもそも、どうして大学は本気でトラブルに対処しないのか??
前半を読んで疑問に思った人がいるはずだ。
「悪いことをした学生は、刑事事件になろうがなるまいが厳しく退学処分にした方がブランドイメージを保てるのでは?」
…そこが学校の難しいところ。
大学のサークルに限らず、高校の部活や小学校のいじめなど…学校という場所では、トラブルや不祥事の隠蔽が起こりやすい。
これは理由が2つあって、
1つは、トラブルがあったと認めてしまうと、ずっと残るが隠蔽しているうちはばれないから。
同時に、トラブルを告白したり、解決したりしたところで先生には特にインセンティブ(ボーナス、利益)があるわけでもなんでもないから。
小中高大…日本の学校全般に言えること。
自浄作用が働かないのではなく、働かせたところで利益もないし暇もないし解決しても誰かが褒めてくれるわけじゃない(そもそも問題が起こったことが悪いという感じでWikipediaや報道された記事だけがずっとネットや地域の噂として残る)から、学校自体にトラブルを解決する機能が弱い。
また、私学の場合、生徒は不祥事を起こしても、授業料や入学金を払ってくれるお客様でもあるため…収益の観点からも、学生の勝手なトラブル1つで、数十人…大学生なら一人頭年50万円以上の収益を失うことになるから…切りたくない。
刑事事件になるかネットで話題になるまで事件は基本放置する。発覚しても刑事じゃない時は大学のサークルを解体数程度で、退学にはほぼしない。
もう1つは高校と大学特有の問題。
学校がトラブルを認めたり、厳しい処罰を下したことが世間に知られると、OBなど学校が持っていたコネクションが弱くなってしまうため。
ここが重要で…どんな年だろうと大学生のほとんどは
・学生運動で過激なことをするわけでもなく
・酒とお泊りで、性犯罪まがいの遊びをしているヤリサーでもなく
・監督の命令で授業を切り上げて、試合に出たくて殺人タックルをしないといけないほど追い詰められてたアメフト部員でもなく、
ごく普通の大学生活を送ってる。…勉強しているかどうかは別として、犯罪まがいのことはほとんどの人がしてない。
それを、発覚させたり、厳しく処罰することで、波風を立ててしまうと…真面目な学生や卒業生にも残ってしまう傷跡として、出てくるから大学は極力なーなーにする。
ましてや、日大ほどでかい大学となれば、就職先の確保にOBのツテは必要だし、OBもOBで枠を取るだけの力を持つためにいちいち大学の不祥事が重荷になるのは好ましくない。
関係のない在学生にとっても、不祥事のせいで、肩身の狭い思いをしたくはない。
…と、このように悪い意味で、利害が一致してる。
だから、学校全般のトラブルの対応は遅れるし、日大も誠意ある対応なんてものを学んでこなかったし、できる限り問題を先延ばしにした。…元々学校には自浄作用なんてないし、揉め事が起こってると認めること自体が、日大に関わる人間のほとんどにとって不利益だから。
それに、ネットや報道は2週間…長くても1ヶ月我慢すれば、下火になるから。…刑事事件にならない限り。
だからこそ、刑事事件にしたアメフトの試合で被害を受けた選手の父親は、優秀。
刑事事件にしないと大学がなーなーに対応する危険が、過去の大学の不祥事を見えると、明らかだから。
スポーツで事件性があるものは少ないし、むしろスポーツの方が故意に事件を起こしたと証明できるものは少ないんだけど…それでも刑事事件にしておかないと、大学もインターネットもいつもの調子で2週間騒いで話が終わる程度になるから…被害届を出したのはとても良かった。
日大の学生がかわいそうとかそういう話は出ると思うけど、そういうことを盾に教育機関は揉め事をなーなーにする体質を付けてきているわけなので…徹底的にやってほしい。
どうせやんないと思うから、これから受験する人は日大を避けるのが現実的なんだけどさ…。
大本営発表 改竄・隠蔽・捏造の太平洋戦争 (幻冬舎新書) [ 辻田真佐憲 ]
|