「今の日本で即身仏になるのも、作るのも犯罪」だそうです。
即身仏についてのドキュメンタリーを見た。
思いの外、興味深い内容だったので、裏とりも兼ねてちょっと即身仏について調べてみた。
そもそも即身仏ってなれるもんなの?
理論上なれる。
ただ、なり方が「すご~く手の込んだ自殺」でかつ、「周囲の協力が不可欠」だから、現代社会では禁止されている。(自殺自体だめだし、手伝うのは犯罪。)
背景には、江戸時代に飢餓から人々を救うためにたくさんの人が即身仏になるべく、そういう修行をしたため、明治時代に禁止された。
日本に現存する即身仏のほとんどは江戸時代に生入定したもので、ほとんどは山形県に保管されてる。
日本で最初に生入定したのは空海と言われるが…諸説あり。
日本に実在する最古の即身仏と、入廷文化の歴史
ただ、日本に現存する最古の即身仏は、空海以前のもの。
…というのも、中国の石頭希遷という禅僧で、入定したのは790年…奈良時代の末期だそうだ。
おそらく、日本人でこの人のことを知ってる人は宗教に詳しいか、オカルト・サブカルオタクのどっちかで、とてもマイナーな人物。
何しろ、生前に日本に来ていないのだから。
なんで、日本に彼の即身仏があるかというと…1911年に辛亥革命が起こった時に、日本の研究家が革命軍が放った火の中から救い出して、日本に持ち帰ったからだそうだ。
その後、研究者と宗教団体の間を転々として、昭和50年に總持寺におちつく。(※ただし、非公開なので今現在どうなってるかはわからない)
詳しくはこの記事を参照。
Kameno's Digital Photo Log: 大本山總持寺に祀られるミイラ仏
ちなみに、首都圏はおろか関東地方で見ても現存する即身仏が保管されているのは、この石頭希遷だけなので、「日本に現存する最古の即身仏が、神奈川県横浜市鶴見区」にあるのを知って、かなり驚いた。
…というのも、横浜市鶴見区は、川崎からすごく近いので、
「あれ?めっちゃがんばれば、歩いて参拝に行けるぞ??」
という距離だったので、かなり驚いてる。(しかも文字通りの意味で桁違いに古いし)
日本では、大半の即身仏が江戸時代のもの。
文化自体は、空海以降なので平安時代からあったそうだが、日本人で最も古いのは鎌倉時代。
詳しいことはお寺のホームページをどうぞ。
ちなみに、西生寺は夏場や年末年始以外は公開していて、拝観料を払えば見られるそうです。(調べたら、ブログに載っけてる人もいたから画像だけみたい人はそちらをどうぞ。)
ただ、古代中国でも僧がミイラになる概念自体は普の時代から存在するが、それは日本の即身仏とは文化的背景が違うみたい。(ミイラという言葉を使ってるのは、死後の保存処理によるところが大きいから。)
即身仏のなり方
順番はソースによって若干違うけど、ここではドキュメンタリーで言ってたもので説明する。
・まず、五穀を断った生活を1000日。木の実や種のみで生活。
・1000日の間は激しい運動をする。
↓
・次に、木食。木の根、木の皮だけでで生活。
・運動を止めて経を唱える生活に。
↓
(ここまで来ると体がお風呂に入っても浮いてしまうから押さえつけてもらわないといけない。また、人体が強い飢餓状態になるため、自分の体の中の骨や臓器を食い尽くしていく)
↓
・漆の樹液が入ったお茶を飲む。
※ただし、これについてはおまじない程度の効果しかない。本当に漆が防腐剤になるだけの量を飲むと、それは致死量だからだ!!
↓
・温泉の水を飲む。(バクテリアに効く成分が入ってたとか入ってないとか言われてるが、これも本当に効くだけの量と致死量の関係性が謎)
↓
・木箱の中で断食をしながら、鈴を鳴らしながら読経。鈴の音が絶えたのを合図に取り出される。
…最初の方に「手の込んだ自殺」と言ったけど…日本ではここまでしないとこうはならない。
乾燥した土地なら、亡くなった後そのままミイラになることもあるそうだけど、日本では腐ってしまうからこうはならない。
しかも、ここまでやっても即身仏になれる人と、なれない人がいたり、なったところで掘り起こされない人もいるらしい。
宗教上の救済や、遠い未来に弥勒菩薩とともに現れるようなことが本当かどうかは知らんよ?
ただ、誰にでもできるもんじゃないので、わざわざ見に行く人や、ありがたがって信仰の対象になる気持ちはわかんなくもない。
生産性があるかどうかと言われると…全くの無駄だと思うし、野蛮な文化だという人がとても正論だと思う。
それでも、「人間ってこんなことができてしまうのか」という驚きというか、感慨深さというか、感動と言うか…うまく言葉にできないような衝撃を与えてくれる存在だとも思う。
何が言いたいかっていうと、「即身仏文化ヤバい!」です。
なんというか…想像と理解を色々超えちゃってるからヤバいとしか言いようがないです。
特定の地域に偏ってるから、山形県の山岳信仰を研究するともっと色々出てきそう…。
僕はここまではやらないけど、興味のある人はやってみて。